松下慶太先生の語る、アフターコロナのオフィスデザイン

わからない状態を評価する教育

廣田
廣田

環境変化とか異世界転生を楽しめないと、生き残りづらい世になると思うのですが、楽しめる人や、楽しめる人の素養はどういうところにあるのでしょうか。

松下:楽しむ要素…ザクっと言ってしまうと、「減点法ではなく加点法で見る」しかないですよね。減点法で見る人が多いので。そこは教育の問題なのかなという気はしますけどね。

廣田:教育の問題ですか?

松下:小・中学校のシステムにより、自己肯定感が低い子たちが大量生産されているように思えます。「こうしなければならない」とか「こうすることが大事」と言いすぎた教育といいますか。結局は誰かが言わないといけないことを小・中学校の先生に押し付けている自責の念もあるのですけれどね。大学はそうではない部分が大きいので。

あとはわからないことへの耐性を身に着けること。知的好奇心で知りたいことを解明していくのも大切ですが、その前にわからなことを楽しむ。わからないとか、もやもやしていることを「これ楽しいんじゃないか」とか「これ面白いんじゃないのか」と思える、そこが1番のポイントな気がします。

廣田:わからないままでも良いというのは、1つの価値観かもしれないですね。

松下:よくわからないことをやってるのっていいよね、という価値観が、今は否定されがちです。「それ、効果が出るんですか?」と。ワーケーションだったら「行って生産性上るんですか?」と。わからないなら投資のつもりでやってみるのが良いと思うのですが、やはり「効果が出ないとできません」と。それは言う方も、やる方もそうなんですよね。

廣田:特に会社の中だと「それは正しいのか。効果が出るのか。生産性が上がるのか。」という問いは、「その選択は正しいのか?」と突きつけられているのと同義で。そこに遊びがないと投資ベースで話ができないなと思います。

松下:そうなのですよ。今まで通りやって右肩下がりだったら、打開策として「よくわからないこと」に投資してみることも必要なのではないでしょうか。それでなくても日本はまだまだスタートアップへの投資が少ないと言われています。それもやはり「よくわからないこと」への耐性やそれへの余裕がなくなってきていることの結果かもしれません。

廣田:放っておいたら右肩下がりですものね。人口減るわけですし、経済的に消費する量も生産する量も下がるわけだから。

松下:そうです。僕は企業連携の演習なども担当していてそこでもよく言うんですけど、「何もしなかったら」確かに右肩下がりな時代に「これをすると15%効率上がります」っていうのは、どうなのかと。確かに効率は上がるけど全体的に下がってるんだから良くてトントンじゃないですか。下りエスカレーターを無理矢理上がって、動いてないのと同じです。だから「よく分からないけどすごいかもしれないこと」を何個か試行していくことはポイントになるのではないでしょうか。言い換えると、エスカレーター下りて別のエレベーター探すようなやり方ですね。

廣田:ITのプロジェクトもそういうところがあります。「全体って放っといたら下がるよね」という認識が、メンバーの頭の中にフレームワークとして存在するとこれからの選択肢や判断が変わりますね。放っといたら下がるんだから…で、さらにIT系のプロジェクトって売り上げにアプローチするかコストにアプローチするかって、コストにアプローチすることの方が多くて。コストにアプローチしたら、もう総量は下がり続けるのをさらにコストを下げるって全員で落ちていくんだ…みたいな。

松下:そうそう。一部では効率化したり合理的にすることも必要だと思うんですけど、それだけに全振りすると全体のパイが減っている中で結局変わらないことになりますよね。

廣田:効率化させて効果が見えていることが逆に怖いって気づけるともう少し多種多様なプロジェクトがぼこぼこ出てくる気はしますね。

松下:そうですよね。それを面白がれる人が必要なのかなという気はしますよね。

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