松下慶太先生の語る、アフターコロナのオフィスデザイン

今回お話しいただくのはこの2人!(以下敬称略)

松下 慶太

関西大学社会学部教授。専門はメディア論、コミュニケーション・デザイン。近年はコワーキング・スペースやワーケーションなど新しい働き方をメディア論、都市論などの視点から研究。近著に『ワークスタイル・アフターコロナ』(イースト・プレス、2021)、『モバイルメディア時代の働き方』(勁草書房、2019)

廣田 真一

未経験からITの世界に入り、ERP導入コンサルタント、フリーランス(PMO/新規事業PJ)、社内SE(社内システム企画/情シス)を経て株式会社Number「SaaS人材のチャンピオンサーチ」事業責任者。大企業からベンチャーまであらゆる事業規模のITコンサルティングを手掛ける。得意領域はワークフローのデジタル化、制度会計/販売管理。推しツールはServiceNow。

移行準備期間は、なし。

廣田
廣田

なぜ、今のタイミングで「ワークスタイル・アフターコロナ」をお書きになられたのか、社会変化のポイントとして気になった具体的なエピソードがあればお伺いしたいです。

松下:そうですね…例えば、僕は大学にいますけれど、1限に来るのが面倒だと言っていた学生たちが、なぜ対面したいと言っているのか不思議に思って。

「就活が嫌だ」と言っていたのに、面接がオンラインになったら「それはそれで嫌だ、オフィス行きたい」と。言っていることがいざ実現した時に、「その拒否反応は何だろう」という疑問が一つのとっかかりとしてありました。

廣田:確かにそれは変ですよね。国民性が関係しているのですか?

松下:日本人だからということはないと思うんです。時計の針が(コロナによって)1年で一気に10年分くらい進んだことによる困惑が一番大きいと思っています。じゃあ少しずつオンラインの比率を増やしていけたのかというと、それは無理だったので、一気にオンラインが進んでどこまで対面に戻していくのかという逆算の話になっていますね。

廣田:振り子がどこまで戻るかというイメージですよね。

松下:はい。全部戻して対面にする企業もある一方、このままの企業もあると思いますし、社会変革としてはそれしかやりようがなかったと感じます。徐々に増やすより、一気にオンライン化して、無理だった部分を戻していくのが妥当だったと思います。「やってみないと分からない」をなかなかやれなかったのがコロナの前だったというのもありますし。

オンライン会議の上座とメタファー

廣田オンラインでリスクだと思われていたことを飲みこめる社会情勢になりましたね。zoomの上座の話(※1)含めて、「オンラインだと失礼になるのでは」などの心配事がコロナで一気に取り払われたと思います。

※1 zoomを使ったオンラインミーティングで上座、下座が欲しいという意見が話題になった。

松下:私はよくメタファーという話をします。例えば、今まで対面だった会議をオンラインに移してみて、「やっぱり上座は必要だよね」というメタファーは大切です。ただ、zoomでの打ち合わせが当たり前になってくると、上座は関係がなくなってくる。

でも、そのメタファーが全くないと、高齢者を中心に違和感が強くなってしまう。

廣田:全くないと、ただ画面を見ながらしゃべるだけで良いって話になりますもんね。

松下:一方でそこはオンラインの弊害と言われます。例えたら、いわゆる「昭和ノスタルジー」ですよね。

「昭和の時代は良かった」と昭和を懐かしむけれど、現実問題その置換って本当にそうでしたか?と。同じように「対面の時の打ち合わせの方が意思疎通できて良かった」って言うけど、本当に?「あなたは、実際対面で集まっている時に、話している人の顔を見ていましたか?意見を言っていましたか?」という話なんですよね。

廣田:参加していた雰囲気や空気感はあったかもしれませんが、対面の方が意思疎通できたということはないと思いますよね。大企業のITプロジェクトのキックオフになると30人対30人など大人数会議もありますが、いざzoomで登場すると喋るのは2~3人で。その他の人にはアーカイブ共有でよかったのではないか?と日々感じています。

松下:普段、仕事で合理性とか効率化と言っているのに、オンラインミーティングについてはそういう印象論に近いこと(対面会議の方が意思疎通できて良い)を言うんだろうか、とは思いますよね。

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