コロナ禍で課題噴出 大学経営ぶっちゃけトーク

今回は、大学への新型コロナウイルス感染拡大の影響に迫ります。学生の就職活動や、先生のITリテラシーなどの課題に対し何ができて何ができなかったのか。立正大学キャリアサポートセンター・斉藤広樹副参事にこの1年余りを振り返っていただきます。(2021/04/17 インタビュー)

本対談は徹底した感染症対策のもと実施されておりますが、撮影時のみマスクを外しております。ご了承ください。

斉藤 広樹   

学校法人立正大学学園(立正大学) キャリアサポートセンター 熊谷キャリアサポート課 副参事 斉藤 広樹 大学職業指導研究会第一分科会 運営委員長 国家資格キャリアコンサルタント 2級キャリア・コンサルティング技能士(国家資格) 特定非営利活動法人日本キャリア開発協会認定CDA

廣田 真一

未経験からITの世界に入り、ERP導入コンサルタント、フリーランス(PMO/新規事業PJ)、社内SE(社内システム企画/情シス)を経て株式会社Number「SaaS人材のチャンピオンサーチ」事業責任者。大企業からベンチャーまであらゆる事業規模のITコンサルティングを手掛ける。得意領域はワークフローのデジタル化、制度会計/販売管理。推しツールはServiceNow。

「何とかなるって言ってたじゃん」余裕の就活が激変

廣田
廣田

さっそくですが、コロナ禍で就職活動にどのような変化が生じましたか?

斉藤:コロナ以前の就職活動は、学生が完全に受け身の状態でもなんとかなっていました。

時期が来れば黙っていても情報が来る。スカウトが来る。案内が届く。ですので、自然と「説明会を覗いてみるか」という感じになり、ガイダンスに出たり合同説明会に参加して企業の話を聞いたりするうちに、少しずつモチベートされる、そんな流れでした。ところが、今はコロナ禍でその部分がぽっかり何もない状態。

廣田:ぽっかり何もない、ですか?

斉藤:就職活動に最初は興味がない学生でも、合同説明会の話が耳に入り始めると、周りの友達もソワソワし始めますので「そろそろ動かないとやばいかも?」といった空気感が徐々に醸成されるのですが、それがまったく無い状態です。

廣田:就活へ入っていくきっかけを失ったのですね。

斉藤:2年ぐらい前は学生の立場からすると非常に良い「売り手市場」の時代でした。慢性的な人手不足のうえに、少子化がさらに進むのを見越した採用の強い動機が企業側にありました。オファー型やエージェントの活用といった中途採用者向けの手法が新卒採用にも活用され始めた、そんなタイミングですね。

そうした「売り手市場」の環境に学生はどっぷり浸かっていたので、実は合同説明会の参加者は年ごとに減っていました。説明会に参加しなくても就職できたから。就職活動を終えた先輩から「焦らなくてもどうにかなる」なんて感想を聞くので、どうしてものんびり構えてしまいます。

廣田:このコロナ禍では、その先輩の体験がまったく通用しなかったのでは?

斉藤:そう、通用しない。今年の春の卒業生にとってみれば「なんとかなるって言ってたじゃん」、「コロナだなんて聞いてない」という状態からのスタートでした。余裕をもって構えていたら、突然すべてが変化したというのが去年の3月です。

情報断絶で「私どうしたらいいんでしょう?」

廣田:学生の間にはどんな動揺があったのでしょうか? 斉藤さんが直接相談を受けた例を聞かせていただけますか?

斉藤
斉藤

「私どうしたらいいんでしょう?」という電話が多くかかってきたのが去年の3月、4月頃です。

斉藤:スマホ世代の学生は、情報が勝手にやってくるという体験に慣れた世代です。それが急に遮断されてしまった。通学できないし、LINEの友達リストを眺めても全員どうしたらいいかわからないという状況。家にテレビがない学生も多い。黙っていても情報がくることに慣れていた学生は、世の中の動きから遮断されてしまいました。

廣田:確かにスマホの影響はすごくあるかもしれないですね。ニュースアプリやtwitter、SNSもそうですが、毎日眺めているだけで何となく全て情報収集できた気になるじゃないですか。トレンドに乗っている気持ちにはなれても、そのドメインというか自分が見えている範囲の外で起きている事象がまったく見えなくなってしまうという。

斉藤:そう、それで就職活動についての情報を得られず「どうしたらいいんでしょう?」という電話がかかってきたわけです。例えば、就職活動がある程度進んでいて3月までは企業から連絡があったのに、急に連絡が途絶えた時の不安。「面接のスケジュールはどうなるのか」、「この会社は今後採用してくれるのだろうか」、不安というより学生からすると恐怖です。

廣田:連絡のない学生もいたと思うのですが、そうした学生に対してどういうアプローチができるだろうかという危機感はあったのですか?

斉藤:すごくありました。置き去りにはできませんから。だけど、コロナ禍で正直我々も何ができるのかわからないという状態になりました。学校に通うことができれば、学生は友達と話したり、掲示板を見たりして就職活動に関する情報が手に入るわけですがそれができない。

大学には連絡網のような仕組みはありませんので、代わりに大学のホームページに就職に関する情報を載せました。そのことをメールで伝えたのですが、普段から大学のホームページを見る習慣がないせいか閲覧回数はまったく伸びませんでした。

廣田:情報の届け方がとても難しいですね。大学というところは、通わないと情報の断絶が起こりやすい面があるのでしょうか。

斉藤:実際に断絶が起きていたのだと思います。緊急事態宣言で学生は家にいるしかない。アルバイトもできない。サークル活動もない。もちろん入学式も卒業式も学園祭もない、大量のオンラインレポートに追われ気分転換もできず、時間だけが過ぎました。

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