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現地の人には言えませんが、オランダは消去法で選びました
廣田:そこから独立してオランダですか?
鈴木:そうですね。人事を担当していると、年金とか少子高齢化の問題をどうしても意識することがあります。リストラも担当しましたから、自然と企業や社会に頼ることができないという前提で、自分の将来を考えるクセがついたのかもしれません。日立在籍時の東日本大震災の復旧後に「WORK SHIFT(ワーク・シフト)」という本と出会い、個人の力を強化し続けていく必要を感じました。要は、日本以外でも個人事業主として働けるぐらいのプロフェッショナリティがないとたぶん生きていけないと。
それにしてもなぜオランダなのですか?
オランダ人には面と向かって言いにくいのですが、実は消去法です。
鈴木:最初はマレーシアを考えていました。家族で中国語も学べるかなと。だけど、うちは子どもが3人います。マレーシアは学費の高いインターナショナルスクールに入れる選択肢しかなく見送りました。
廣田:ほかにも候補はあったのですか?
鈴木:ある程度英語が通じてということでカナダやニュージーランドなども考えましたが、Amazonの経験でアメリカ的な経営はもうお腹いっぱいでした。あと、人事領域はアメリカ発祥で直輸入のものは少なく、だいたいがヨーロッパ経由で届きます。日本の働き方改革もアメリカが指標ではなくヨーロッパ、ドイツや北欧が指標だったりします。そもそも働き方だけでなくその背景にある思想や歴史の異なる国の指標を日本に当てはめるべきなのかどうか疑問もあったので、ヨーロッパの文化や哲学など背景が知りたくなり、住んでみなければわからないと感じてヨーロッパに絞りました。
廣田:確かに、人事系や生産管理系の話はヨーロッパが主流です。ITツールはアメリカから直接入ってきますが。
鈴木:そうですね。それでヨーロッパで、英語がある程度通じるところというともう選択肢はさほど多くありません。移民政策が当時だいぶ保守化していたドイツもない。そうすると本当に4ヵ国ぐらいしか残らず、その中でビザが一番とりやすいオランダにしたということです。オランダ人からもよく聞かれます。「なんで来たの?」って。実は、一番困る質問です。さすがに消去法とは言えず「いい国だから。すごく自然が綺麗で過ごしやすいよね」などと適当な答えをしてしまっています。
廣田:それにしてもご家族がよく承知してくれましたね。
鈴木:妻は私よりも海外志向があるので大丈夫でした。「例文が超面白い」って言いながら辞書を読むのが趣味で5ヵ国語話すことができます。日本語と英語、中国語が完璧で、あとポルトガル語とフランス語。おっと、今回のオランダ語で6ヵ国語に増えていますね。