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マイノリティになって、子どもにめっちゃ恨まれてます
お子さんはどうですか?
子どもは小学校高学年以上になってから海外へ移住したので、相当苦しんでいます。
鈴木:最初は学校に行くのを嫌がりました。理由はやはり言葉です。母国語を話せる人に最後はかなわないという経験が避けられません。最初は英語で会話していても最後はオランダ語を使われると太刀打ちできないのです。そのため疎外感を感じたり、相手が差別しているつもりはなくてもこちらが卑屈になったり。自分のプライドが失われたというか、アイデンティティが今どこにあるのかさまよっている期間だと思います。
廣田:生活圏の深いところに母国語ではない人が入る難しさですね。
鈴木:そうですね。子どものサッカーを見に行って、親も一緒に応援しますよね。インターナショナルスクールではなくローカルスクールに通っているので、親の9割ぐらいがオランダ人です。私は見た目でオランダ語を話せないことがわかるので、英語を使ってくれます。ただ、応援がだんだん盛り上がってくると、完全にオランダ語の世界になります。で、私は南アフリカの人と英語で会話をするしかなくなります。わざとではないのはよくわかっているのですが。
廣田:マイクロアグレッションと呼ばれる問題ですね。一つ一つが小さなことでも日常的に生じることで大きなダメージを負いかねない。
鈴木:そう、完全にマイノリティの世界です。ただ、それを子どもたちに経験させたかったのもあります。日本にいると完全にマジョリティ側にいるので、マイノリティの気持ちがなかなかわからない。これから世の中もっと激しく変化するし、自分とは全く関係ない変化が起きるわけです。そのことに日本人がマジョリティの世界で大人になってから気付くのは遅いだろうと思い、今のうちに無理矢理にでも変化をつけようと。
廣田:大人になってからはきついですね、確かに。
鈴木:昔だったら理不尽な世界として部活とかがあったと思います。理由のない上下関係や過去の延長線上のルールなどロジックで太刀打ちできない世界です。今でも、日本の企業に一部残るような社会の価値変容に対応していない理不尽な世界。年功序列とか社歴が長いから給料高いとかどういうロジックなのかが説明しづらい世界はどうしてもあります。なので、早めに理不尽な世界を体験させたわけですが、子供たちには相当恨まれています。
廣田:なんでオランダに連れてきたのか、と?
鈴木:そうですね。親のエゴで海外移住していますし、教育虐待ではないかと悩んだ時期もあります。ただ、恨むのだったら10年後に恨んでくれって言っています。恨むのは今じゃない。今は一緒に頑張ろうって。教育には正解はないですし、家族プロジェクトでもあるので、目的を年に1回プレゼンテーションして、家族内エンゲージメントを維持しているところです。家の中でも組織開発をやっているのかもしれませんね。