目次
ボスマネジメント
難波:ワンマン社長のいる会社やベンチャー企業から社風を変えたいという依頼を受けたら、社長(上司)の「根本感情」を大事にするようにしています。会社理念と社長の根本の考えが異なっていることも多いんですよ。
廣田:大企業だったら「配属は運」ですし、中途入社でも「社長/上司と合うかは運」とよく言われますよね。「根本感情を考慮して配属される」ことは難しいと思うのですが、上司の根本感情はどのように見抜けばいいでしょうか?
難波:ミドルシニアクラスの人たちには、上司や会社の命令が絶対っていうことはなく、コミュニケーションを通して組織に対して自分が働きかけをして、「自分が居心地のいい状態・行動」をとってくれるように、上司にボスマネジメントをした方が良いですよ、ということを言っています。
廣田:ボスマネジメントですか?
難波:はい。上司に対して「あなたから仕事の指示が来ていますが、私はその仕事が嫌いなのでやりたくありません。私の場合はこういう仕事が得意で好きなので伸ばせます。今回の仕事は減らしてこういう仕事を増やしてもらえませんか」というコミュニケーションです。
「あれ嫌です、これ嫌です」と新人みたいなことを言うのとは違います。「私はこちらの方がパフォーマンスが出せる。なぜならば、このような経歴があるからです。そして私がそれをすることは、会社にとってwinになると思っています」ときちんと伝えて、役割や、上司からのコミュニケーションを自分で交渉して勝ち取るという考え方が大事です。
70歳までの就業とも言われていて、これから特に組織で長く働かなくてはならない。その時には、上司の当たり外れは運任せではなくて、外れの上司を引いたら外れの上司なりに、少なくとも大外れよりは中外れくらいにするコミュニケーションは大事です。
そのコミュニケーションを行わない人がとても多いです。上司の言うことは絶対だという価値観があり、愚痴を言うか黙って耐えるしかないと思っている人が結構いるんです。
廣田:会社員としての生存危機に直面していたら、その価値観から脱してボスコミュニケーションを行う必要がありますね。
「つまらないので部長からおろしてください」
難波:私は2年前に上司にプレゼンして、部長からおろしてもらいました。部門長だったので、事業部長の次くらいのポジションで仕事をしていました。部下育成や、ウィークリーで本国に数字のレポートを送ったりする仕事を日々こなしていたのですが、
「なんだろう、このつまらなさは…」と感じていたんです。
そこで、わざわざ上司にPowerPointでプレゼンしました。「好き」「嫌い」「できる」「できない」という4象限のマップを作り、私はコンサルとかセミナー、ブログ・本を書くとか、外向きの仕事が好きで、ある程度自信もある。一方で、会議や部下育成、数字の報告や事務作業は大嫌いです。だから、私をそこから解き放って、得意なフロント業務につけた方があなたにとって得ですよ、というプレゼンをしました。
その時の事業部長はありがたいことに、本当に部長からおろしてくれたんですよ。そこから先は会議に呼ばれなくなりました。
「難波君、これやってくれない?」と言われても、「いやぁ、それは他の人が良いですよ。」と事業部長に言えるくらいのボスマネジメントをしていて。
廣田:それはすごいボスマネジメント力ですね。
難波:自分の好き嫌いを明確にしておくと、ボス側も部下マネジメントがしやすくなります。何を振っても「はい、わかりました」って返事だけされて結果を出せない部下よりは、引き受けたことは全力でやる部下の方が、今の時代はお互いやりやすいんじゃないかと思いますよね。
廣田:やりやすいですね、確かに。僕も前々職で上に事業部長がいた時は、「こう動いてくれ、落ちてきたやつは俺が打ち返すから」というボスマネジメントはしていた気がします。
難波:そうなんです。私の所にはこういう玉を飛ばしてくれればガンガン打つよ、って言えた方がお互い楽なんだけど、なぜ言えないかというと自分にどんな玉が来たら振れるのか、ストライクゾーンが分かっていない人が多い。
「自分が熱中できる仕事ってなんだろう?」とか「やりたいことってなんだろう?」ということを自分でも考えて、それを上司にも伝えて、うまくお互いのポジションをとることは、これからとても大事だな、という気がします。