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デジタル評価が働かないおじさんを検知する
廣田:今、私がコンサルで入っている大手企業もワークフローの改革で「見える化」を進めています。どんな仕事があって、誰と誰がやり取りをしていて、どんな承認経路や確認経路があるのか…を全部入れた新しいITのプラットフォームに乗せ換えようって話をしていて。
その過程で、「誰がきちんと働いているのか」をあぶり出されちゃうんですよね。さらに「誰が稼働しているか」も全部可視化されるようになってしまう。今後、人事制度と評価の軸も可視化された数値がベースになるだろうと思っています。そうなると、結構デジタルライクな、ロジックで詰めていく世界観の働き方になるんじゃないかなと。
難波:そうですね。私は専門領域の中でも「働かないおじさん研究家」みたいなところがありますが、特にこのコロナ禍のテレワーク化で、露骨に可視化されました。コロナが働かないおじさん発見装置になっているんですよ。「一年間この人何の発言も見てないんだけど、本当にいる?」って。「要る?」を超えて「(存在して)居る?」というレベルの人も出てきているんです。
廣田:そうなんですか。
難波:だから50代のキャリア研修で「成長戦略以前に、自分がどうやったら生き残れるか、会社の中での生存戦略を考えておかないと、たぶんあなたいなくなっちゃいますよ」という話をする機会が増えました。
廣田:そういう方々は、ご自身で危機感は持たれているんですか?それとも、難波さんに言われてハッとするのか。
難波:(危機感を)あまり持っていないです。「持っていないから持たせて欲しい」という企業のリクエストから入ることが多いです。ヒアリングすると、問題は本人ではなく、会社側。上司が実状を本人に伝えずに済ませてしまって、本人が気付いていないのです。
最近は心理的安全性や、コーチング的なアプローチを…という話が強い上にパワハラのリスクもあったりして、お互い「伝える」ということに強く踏み込めないんです。
今は、リモートでの1on1となると、上司が電話するのを遠慮してしまう、という世界観なんですよ。「今大丈夫?」って。「最近電話するのがご迷惑になっちゃうんじゃないかと思っちゃって。」と上司が言う。お互いに心理的安全を意識して遠慮しすぎて、本音の部分を言えなくなっている。
そこに対して「きちんと言わなきゃいけないよね」という話が『ネガティブフィードバック』(難波さんの著書タイトル)で。
心理的安全性
廣田:「伝える」際に「心理的安全性」を重視してしまうのは、どんなところに原因があると思いますか。
難波:1つは組織の風土の問題が大きいです。ありがちなのが「自由に発言していいぞ」と社長や部長が言う会社。「弊社は自主性を重んじています」みたいな。実際は「言ったもの損」になってることが多い。手を挙げて発言すると「それやるのはいいけど、絶対失敗しないだろうな?」とプレッシャーをかけらたり、「余計なこと言ってないでちゃんと数字やってよ」と言われたり。
廣田:ありますね。
難波:大きな組織に勤めていると、そのまま信じて手を挙げたり発言すると損をする雰囲気が根底に流れている会社が、まだまだ多い。
そこを、「とりあえず挑戦してもいいよ」が難しくても「失敗したら評価はできないけど、失敗してもいいよ」くらいのところまでいけると心理的に安全になります。「これダメだったね」「こういうの改善した方がいいよ」と言う話を当たり前に言える状態、挑戦できること、指摘が普通にできることが本来は必要ですよね。